芋粥

芋粥
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    慶の末か、仁和の始にあつた話であらう。どちらにしても時代はさして、この話に大事な役を、勤めてゐない。読者は唯、平安朝と云ふ、遠い昔が背景になつてゐると云ふ事を、知つてさへゐてくれれば、よいのである。――その頃、摂政藤原基経に仕へてゐる侍の中に、某と云ふ五位があつた。これも、某と書かずに、何の誰と、ちやんと姓名を明にしたいのであるが、生憎旧記には、それが伝はつてゐない。恐らくは、実際、伝はる資格がない程、平凡な男だつたのであらう。一体旧記の著者などと云ふ者は、平凡な人間や話に、余り興味を持たなかつたらしい。この点で、彼等と、日本の自然派の作家とは、大分ちがふ。